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fld_nor.gif 『裸の街』をアレンジしてみました
投稿日 : 2025/08/07(Thu) 06:56
投稿者 ベル
参照先
本誌2025年7月号のTOPICSにあった「AI小説」アンケートですが・・・
以下、省略(笑)
それでは「パクリ小説」・・・もとい「リスペクト小説」をお届けします。



『裸の街』


第一章:法外なアルバイト代

「ねえ、佳織。すごく割の良いアルバイトがあるんだけど、やってみない?」
目の前のカフェラテから立ち上る白い湯気をぼんやりと眺めていた佳織は、同じ女子大の親友:真弓の話を、ろくに聞きもせず聞き流していた。真弓の方もそんな反応には慣れているのか、構わずに誘い続けた。

「何とバイト代は、日給5万円よ!すごいでしょう?」
「えっ?」
佳織は思わず身を乗り出した。真弓が提示した額は、これまで経験してきたどんなアルバイトよりも高額だったからだ。
「で、どんな仕事内容なの?」
真弓は少しばかり口ごもったが、その様子が逆に佳織の好奇心を刺激した。怪しい仕事ではないかという不安も、高額な報酬の前ではすぐにかき消された。

「えっとね。・・・男性と一緒に街を歩くだけ。それだけなんだ」
「どうしてそんな簡単なことで、これほど高額な報酬が支払われるの?」
真弓の説明があまりにも大雑把なので、佳織は首を傾げた。
「ただ一緒に歩くだけって言うのは本当よ。ボディタッチとか、そういうのは一切ナシ。もちろん、無理やり押し倒されたりもしないから」
真弓の表情にはウソがなく、佳織は少し安心した。しかし、それでも拭いきれない疑問は残ったままだ。

「じゃあ、なんでそんなに高額なの?何か裏があるんでしょう?」
佳織の率直な問いに、真弓は小さな声で付け加えた。
「ただ一つだけ、条件があるのよ。それは・・・」
「・・・もしかして、裸で歩くとか?」
佳織が震える声で問い質すと、真弓は気まずそうに小さく頷いた。

「実は、そうなの。男性は服を着てるんだけど、佳織の方は、その・・・、何も身に着けていない姿で、一緒に街を歩くの」
裸で街を歩くだなんて、想像するだけで佳織の心臓が一瞬止まり掛けた。

「もちろん、人目につかない時間帯とか場所を選んでくれるんだけど、本当に歩くだけだから。それは約束するわ」
「歩くだけ?真弓だったら出来るっていうの?」
恥ずかしさ、羞恥心、そして不安が佳織の頭の中を駆け回っていた。しかし同時に、これまで感じたことのない『奇妙な興奮』が、胸の奥底でザワめいた。

「・・・(人目につかないって言っても、街の中でそんな都合の良い場所なんてある?)」
佳織は少しでも落ち着こうと、目の前のカフェラテを一口飲んだ。冷めてしまったカフェラテは、苦味だけが際立っていた。
一方、真弓は佳織の様子をじっと見つめていた。真弓の方にも、このアルバイトを佳織に引き受けてもらう理由があるようだった。

「もう少し具体的に話してくれないと、何とも言えないわ。何でも構わないから、他にも何か知ってるなら教えて?」
「えっとね。・・・比較的多いのは、住宅地かしら。大通りじゃなくって、道路が曲がっていたり、T字路や突き当りがあるような、見通しの悪い感じ」
「そんな所を一緒に散歩して、その男性は何が楽しいのかしら?」
確かに見通しが悪い住宅地なら、開けた場所よりも見つかりにくいだろう。しかし、そんな場所を自分だけが何一つ身に着けず、見ず知らずの男性と歩いている場面には、違和感しかなかった。

「男性側が楽しいと思うかどうかは、コチラが考える必要はなんじゃない?ただ一緒に歩くだけのアルバイトで、楽しませて欲しいとは言われていないんだから」
「・・・まあ、それもそうね」
肝心なのは、自分がどんな状況に置かれるか。それがこの話を受けるかどうかの全てだった。

「・・・(でも、その男性には裸を見られるのよね)」
報酬額を考えればそれくらいは仕方がないのかも知れないが、簡単には返事が出来なかった。
「・・・考えておく。少し時間をちょうだい」
佳織がか細い声で答えると、真弓は安堵したように小さく息をついた。

***** ***** ***** ***** *****

その日から翌日に掛けて、佳織は常に奇妙な『期待と不安』に包まれることになった。夜の街を裸で歩く自分を想像するたびに、興奮した佳織は頬が熱くなったが、同時に不安も拭えなかった。
「依頼者の男性に裸を見られるのはやむを得ないとしても、偶然鉢合わせた人にまで見られるのは、どうにか避けられないかな?」
結論が出せないまま学校に向かうと、その途中で実家の父から電話が掛かって来た。

「お父さんからだ。でも、何で?いつもはお母さんからなのに」
その理由はすぐに分かった。父の勤める会社が不景気になり、父がリストラされるようなのだ。早期退職の希望者には割増金が支払われるので、大学を中退する程ではないが、追加の仕送りは難しくなるだろうと言われた。

「大丈夫だよ、お父さん。アルバイトもあるし、私のことは心配しないで」
佳織は父を慰めて電話を切ったが、仕送りだけでは今の生活を維持出来なかった。先月スクーターを買い替えたばかりなのだ。

「真弓。昨日の話だけど、もう少し聞かせてもらえる?」
アルバイトを断る理由がなくなった佳織は、授業を終えると、自分から真弓に声を掛けたが、何か得体の知れない『運命』に引き寄せられているような感覚を覚えた。



第二章:商店街青年会の悪ふざけ

「えっ、本当にやるの?」
佳織からの突然の申し出に、真弓は目を丸くした。昨日あれほど悩んでいたのに、まさか一夜明けただけで自分からやると言い出すなんて思ってもいなかったのだろう。

「うん、やってみるよ。でも打合せ場所には、真弓も付き合ってくれる?一人だと心細いから」
佳織の決意に、真弓は複雑な表情を浮かべていた。しかし自分から誘った手前、断るわけにもいかず、渋々と頷いた。こうして二人は、依頼主の男性と会うため、大学の近くにある商店街のカフェへと向かった。

待合せ場所のカフェは、ガラス張りの開放的な雰囲気で、佳織も何度か来たことがあった。やがて、店の入口から一人の男性が入って来た。年齢は佳織たちよりも少し上だろうか?藍色の半纏に綿パンといったラフな格好だが、どこか清潔感があった。彼が今回の依頼主、地元の商店街で老舗和菓子屋を営む若旦那:拓也だった。

「初めまして。俺、拓也っていいます。今日はありがとうございます」
拓也は席に座る前に、佳織たちに頭を下げた。その真摯な態度に、佳織は少し拍子抜けした。もっと怪しい人物を想像していたからだ。
「それで、どうしてこんなアルバイトを募集しているんですか?」
佳織が単刀直入に尋ねると、拓也は少し気まずそうに視線を泳がせた。

「実は、青年会の仲間内で流行っている、ちょっとした悪ふざけなんです。裸で街を歩く女の子と、服を着たまま一緒に歩くっていうヤツで、その様子を写真に撮って見せ合うんですが、俺には彼女がいないからなかなか実行出来なくて・・・」
拓也はそう言って、申し訳なさそうに頭をかいた。

「それで、俺だけがまだ実行していない最後の一人になっちゃって。今週末までに証拠写真を出さないと、青年会での立場がなくなるんですよ。何とか引き受けてもらえませんか?全額前払いで7万円。いや、10万円出しますから!」
拓也はそう言って、分厚い財布から札束を取り出した。佳織は差し出された現金に息をのんだ。真弓から聞いていた額をはるかに上回っていたからだ。佳織は父が電話で申し訳なさそうに話した時の声を思い出していた。

「佳織、どうする?」
真弓が隣から小声で囁いた。この10万円があれば、しばらくの間は父に心配をかけることなく、自分の生活を維持出来るだろう。
「分かりました。やらせていただきます。でも絶対に、ネットへ拡散したりしないと約束して下さい」
佳織が承諾すると、拓也は安堵したように大きく息をついた。
「ありがとうございます!じゃあ早速ですが、明日の夜でお願いします」
こうして佳織は、拓也からの奇妙なアルバイトを引き受けることになった。

拓也が先に帰った後も、明日の夜には裸で街を歩くのだと自分に言い聞かせ、言い知れぬ期待と不安を気にしないようにした。

帰り道、佳織はあらためて真弓に尋ねた。
「ねぇ。本当にただ歩くだけなの?触られたりしない?」
「そうよ。ただ一緒に歩くだけ。相手の男性が私たちに触れることはないし、証拠写真さえ撮れれば、30分くらいで済むわ」
「・・・私たち?真弓はこのアルバイトを経験済みなの?」
真弓はしまった、という顔を見せたが、佳織ににらまれて観念した。

「実は私、青年会メンバーの別の人とお付き合いしているの。だから、あの悪ふざけのことも聞かされていたし、彼氏にどうしてもと頼まれて、先々週に応じてあげたの」
そう言いながら差し出されたスマホには、着衣の男性と全裸になった真弓が並んで写っていた。

「仲間に見せる時は、顔にモザイクを掛けると約束してくれたけれど、それだと元画像には顔が写っちゃうでしょう?だから自衛のためにも、ナイロンマスクは必須よ」
「・・・でもどうして私には、アルバイトとして話を持ち掛けたの?」
「拓也さんは真面目で、彼女がいたことがないらしいの。だから、拓也さんには無理だと思った仲間想いの彼氏が、『誰か紹介してやってくれないか』と私に相談したってワケ。もちろんちゃんと報酬は払うという条件でね」
真弓の言葉に嘘はなさそうだったが、佳織は胸の奥がザワつくのを感じた。

「悪ふざけって言うけれど、普通なら彼女にだって頼めるような内容じゃないわよね?」
「確かに非常識だとは思うわよ?だけど、佳織だって何か事情があるからこそ引き受けるんでしょう?」
端的に言えば、お金が欲しかったからだが、このアルバイトには何か別の意義があるような気がして、佳織は引き受けると決めていた。

それは、佳織が今まで経験したことのない、背徳的な行為への『興味』なのか。それとも、誰にも知られてはいけない秘密を共有するという、特別な関係性への
『期待』なのか。その答えは、明日の夜には明らかになるだろう。



第三章:裸の密会

佳織が和菓子屋の裏口からそっと中へ入ると、辺りには甘く香ばしい匂いが漂っていた。拓也は店の奥にある、和菓子の材料が積まれた薄暗い倉庫へ佳織を案内した。

「ここなら、人目につく心配はありません。従業員は全員帰りましたから」
拓也はそう言って、倉庫の隅にあった小さなストーブの火を付けた。
「・・・(冷たい夜風を考慮してくれたんだ)」
その気遣いに、佳織は少しだけ心が温まった。拓也は棚から取り出した一枚の風呂敷を佳織に手渡した。

「これで脱いだ服を包んで下さい」
佳織は風呂敷を広げると、マスクを着けたままゆっくりと服を脱ぎ始めた。ブラウス、スカート、そして下着。一枚一枚身体から布地が離れていくたびに、佳織の肌は冷たい空気と拓也の視線に晒され、裸になっていくのを実感した。佳織は完全に裸になった自分の身体を、あらためて見つめた。

「・・・これからこの姿で、ナイロンマスクとブーツしか身に着けない姿で、外を歩くんだ」
『羞恥心』が湧き上がると同時に、真逆と言うべき『高揚感』が佳織の胸の中で渦巻いていた。

「あ、あの・・・。準備出来ました」
佳織が絞り出すような声でそう告げると、拓也はあらためて佳織の姿をゆっくりと眺めた。佳織もあえて身体を一切隠さず、彼の目を見つめて微笑んだ。
「・・・(どうせこれから見られるんだし、慣れておく意味でも、彼には隠さないって決めるぐらいがちょうど良いハズよ)」
実際、拓也の視線は佳織の裸に釘付けになっていたが、彼の視線には下品な欲望の色がなく、むしろ彼の方が緊張しているような眼差しをしていた。

「あの・・・、恥ずかしくないんですか?」
しばらく沈黙が続いた後、拓也の方が先に口を開いた
「いいえ、すごく恥ずかしいです。ほら見て。緊張で手が震えているでしょう?」
そう言いながらも佳織は笑顔を絶やさなかった。もし少しでも身体を隠したりすれば、もうその手をどけられなくなる予感がした。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか。服はここに置いていって下さい」
拓也の言葉に従い、佳織は脱いだ服を風呂敷で包んで棚に載せた。拓也は佳織の手を引いて、店の裏口から静かに道路へ出た。裏口の近くには、一台の黒い軽自動車が停まっていた。

拓也の車の車内は、すでに暖房が効いていて快適だった。席に座った佳織は、走り始めてしばらくしてから、隣にいる拓也をチラリと見た。真剣な眼差しで運転する横顔には、和菓子屋の若旦那としての誠実さが感じられた。

しかし、同意の上でやっているとは言え、事実上の『露出調教プレイ』だ。さっきだって信号待ちしている時に、横断歩道を歩いていた人が驚いた顔をしたので、佳織が裸だと気付いたのだろう。
「・・・(あえて騒がなかったけれど、彼にはまだ私に見せていない『顔』があるのかも?)」
若干の不安を残したまま、車は商店街から少し離れた住宅地へと向かった。

「この辺りは僕の実家があるから、裏道にも詳しいんです。まあ、こんな時間に出歩いている人はいないと思うけれど、土地勘があった方が良いですからね」
拓也の言葉は、佳織の不安を少し和らげてくれた。細い道をくねくねと進み、やがて袋小路の奥にある公園の近くに車を停めた。周りにある外灯はまばらで、辺りはひっそりとしていた。

「じゃあ、行きましょう」
拓也がそう言って車を降りると、佳織もそれに続いた。夜の静寂の中、二人は肩を並べて住宅地を歩き出した。人の気配は全くなかったが、それぞれの家にある玄関先の照明のおかげで、夜なのに思っていたよりも明るかった。時折、電柱の外灯の光に照らされると、自分の姿がクッキリと浮かび上がるのが分かった。

拓也はスマホを構えつつも、佳織の裸体には決して触れようとはしなかった。その距離感は、佳織の心に奇妙な安堵と、そしてほんの少しの物足りなさを与えていた。それはまるで、触れそうで触れない、触れてはいけない『禁断の果実』を、ただ眺め続けられるような、そんな感じだった。

「一緒に写った写真じゃなくて、大丈夫ですか?」
「ああ、これは佳織さんが写真を撮られるのに慣れてもらうためでもあるんですよ。青年会仲間からのアドバイスなんですけれどね」
拓也は時々立ち止まって、佳織の姿を撮った。カシャ、カシャ、と静かなシャッター音が響く。それは、この奇妙なアルバイトの目的を思い出させる音だった。一方、佳織も写真に撮られるたびに抵抗感が薄れ、どこか自分が特別な存在になったような気分を味わっていた。

「どうも暗過ぎて、ピンボケした写真ばかりになってしまうんです。さっきから誰も来ないし、あそこに立ってもらえますか?」
拓也が指し示したのは、ひときわ明るい外灯の下だった。道幅も少し広く、見通しも良い場所に誘導され、佳織の全身に鳥肌が立った。それは寒さだけではなく、この非日常的な状況が生み出す『背徳定な興奮』によるものだった。

「なるべく早く終わらせて下さいね」
佳織はそう言いながら、外灯の下に立った。
「・・・(ああ、ヤバい。これって、遠くからでも見えているよね?)」
佳織はそれに気付いてからも、拓也が望むまま何度もポーズを変えて撮影に応じた。
「・・・(でも、もし誰かに気付かれたとしても、マスクをしていれば身バレだけはしないから)」
それだけが佳織の心を支えていた。

「・・・そろそろ良いですね。お疲れ様でした」
拓也がそう言ってスマホを下ろすと、佳織は我に返った。拓也の表情は達成感に満ちていたが、この奇妙な写真撮影が終わってしまったことに、佳織はほんの少しだけ物足りなさを感じていた。



第四章:背徳の記念撮影

「だいぶ身体も冷えたよね?車に戻ろうか」
そう声をかけると、拓也は自分のジャケットを優しく羽織らせてくれた。佳織は彼のやさしさと温かさに触れ、心を許しても良いと感じていた。車に戻って再び暖房の効いた車内に身を落ち着かせると、佳織はふと思いついたことを拓也に尋ねた。

「あの・・・、他の青年会メンバーはどんな写真を撮っていたんですか?」
拓也は腕を組みながら、思い出すように視線を上に向けた。
「見せてもらってはいるけれど、俺はまだ何も提供していないから、共有させてもらえていないんだ。でも一番印象的だったのは、深夜営業中のコンビニの前で撮影した写真だったな」
拓也は苦笑いしながらも、少し興奮したような表情を見せた。

「コンビニには、いつも数台の車が停まっているよね?店員さんだけでなくお客さんも含めて、気付かれるか気付かれないか。そのスリルが堪らないって言ってたよ。ただ、気付かれた時にどうすれば良いか思い付かないから、佳織さんを連れて行くつもりはないけれどね」
拓也の言葉に、佳織は少しだけ安堵した。しかしそれと同時に、どこか物足りなさも感じていた。すでに拓也には裸を見られても割り切れるようになった佳織は、『恐怖心』よりも、未知の世界への『好奇心』の方が勝っていた。

「もう一つ、聞かせてもらっても良いですか?」
佳織は再び、拓也に質問した。
「事前の打合せでは、『裸で街を歩く女の子と一緒に歩く様子を、写真に撮って見せ合う』って言っていたと思うんですけれど、私と一緒の写真は撮らないんですか?」
拓也はさっきと同じように、思い出すように視線を上に向けた。

「うん、そういう写真も撮るつもりだよ。俺は女の子が裸になっている写真でも十分だと思うけれど、青年会のメンバーに面白がってもらうには、やはり一緒に写っている写真が必須なんだ」
あらためてそう言われると、佳織は自分の胸の奥がザワつくのを感じた。それは『羞恥心』だけでなく、拓也と一緒に秘密の写真を撮るという『特別な関係』への期待でもあった。

「じゃあ、住宅地でもコンビニでもないとしたら、次はどこへ行くんですか?」
「次はここから少し離れた場所になるけど、もう少し見通しの良い場所だよ。でも、きっと大丈夫さ」
佳織の問い掛けに、拓也は少し微笑んで答えた。再び走り出した車は、住宅地の細い道を抜け、幹線道路へと進んで行った。

やがて闇夜の中に、煌々と光るコンビニエンスストアの看板が見えた。
「・・・(えっ、結局コンビニなの?)」
佳織は一瞬身構えたがが、車は減速しないままコンビニを通り過ぎた。車はさらに先へと進み、郊外にある大きな公園の駐車場に停まった。他には一台も停まっておらず、周囲はひっそりとしていた。

「この公園は高台にあるから、夜はほとんど人が来ないんだ。でも別の住宅地には近いから、犬を散歩させている人がいるかも知れない。エンジン音がしないので、鉢合わせする可能性は増えちゃうね」
そう言えば、拓也の口調がいつの間にか友達同士のように変わっていると気付いた。彼も心を許してくれたように感じた佳織は、期待に応えようとあらためて思った。

「危険だと思ったら、すぐに隠れて構わないよ。もちろん俺も周囲には気を付けるけれど、見通しが良いから注意して」
「分かりました」
佳織は羽織っていたジャケットを脱ぎ、助手席に置いてドアを閉めた。拓也の方を振り返ると、誠実な顔と背徳的なスリルを求める顔が、混在しているように感じた。しかし佳織は、このアルバイトを最後までやり遂げたいという気持ちが強くなっていた。

周囲の様子を窺った後、二人は夜の公園の遊歩道を歩き出した。公園の夜風は住宅地よりもさらに肌寒く、佳織の全身に鳥肌が立った。しかしそれは寒さだけではなく、この非日常的な状況が生み出す、ゾクゾクするような『興奮』のせいでもあった。



第五章:犬を散歩させる人たち

二人はしばらく、外灯の光がまばらに照らす遊歩道を歩き続けた。二人の影は、時折長く伸びては、また短くなった。
「僕の隣に並んでくれる?」
拓也はそう言って、自撮り棒に取付けたスマホを構えた。佳織も拓也の言葉に従い、彼の隣に肌がつくほどピタッと寄り添った。カシャ、カシャ、と静かなシャッター音が響く。それは二人の間に流れる『特別な時間』を確認する合図のようだった。

その時、何かの気配が遠くから近付いて来るのを感じた。拓也もそれに気付いたようで、スマホを下ろして耳を澄ませた。
「・・・犬を連れた人が来ているみたいだ。ちょっと、こっちへ」
拓也は佳織の手を引いて、遊歩道から少し外れた茂みの中に隠れた。彼の体温をすぐ側で感じながら、佳織も一緒に息をひそめた。夜露で濡れた足元の冷たい草が、彼女の足に触れていた。

やがて遊歩道の向こうから、一人の男性が犬を連れて現れた。佳織たちの気配を感じたのか、犬はしきりに茂みの方へ顔を向けて、クンクンと鼻を鳴らし続けた。しかし、その男性は犬の様子を特に気にする様子もなく、そのまま歩き去って行った。

「・・・もう大丈夫じゃないかな?」
拓也がそっと茂みから顔を出した。一方、佳織の心臓は大きく脈打っていた。それは、見つかるかもしれないというスリルが生み出す『恐怖』と『興奮』だった。
「さっきの人が向かった方向とは、反対の方に行こう」
拓也が何度も周囲を確認してから、二人は再び歩き始めた。しかし安心したのも束の間、今度はまた別の方向から大きな犬を連れた女性が現れた。今度はさっきの犬とは違い一切吠えることなかったので、近付く気配を感じることが出来なかった。

「まずいな。もうこんな近くに・・・」
拓也がそう呟いた通り、その女性も佳織たちの姿に気付いたみたいだった。彼女は一瞬立ち止まり、目を大きく見開いた。女性の視線が佳織に注がれているのは明らかだった。やがて、彼女の顔に怒りの感情が浮かび上がった。
「変態っ!」
女性の罵声が夜の公園に響き渡り、そのまま犬を連れて足早に去って行った。

「・・・(ついに見つかってしまった。しかも罵声まで浴びせられた!)」
佳織は心臓を高鳴らせたまま、その場で立ち尽くした。しかし恐怖や恥ずかしさを感じながらも、なぜか佳織の心は『高揚感』で満たされていた。

「もうやめよう。これ以上は、危険だ!」
拓也の声はわずかに震えていたが、彼は佳織の目をしっかりと見つめて言った。自分を心配してくれているのが伝わって来たが、佳織は首を横に振った。
「いいえ、もう少しだけ続けましょう。望んではいませんでしたが、こうなることも覚悟していたハズですよね?」
佳織の返事に、拓也は驚いた。

「ど、どうして?」
戸惑う拓也の顔を、佳織はじっと見つめ返した。その眼差しは、この奇妙な体験をもっと深く味わいたいという『純粋な想い』だった。
「だって、まだ拓也さんとの『ベストショット』が撮れていないでしょう?」
佳織はそう言って小さく微笑んだ。その言葉に決意を感じ取った拓也は、何も言い返せなかった。



第六章:背徳のベストショット

「分かった。でも、もう場所は移そう。ここはもう危ない」
拓也はそう言って佳織の手を引いた。佳織の耳にはまだ、女性の罵声が残っているような気がしたが、二人はそのまま公園の中央へと向かい、ライトアップされた噴水の前にたどり着いた。

幻想的な雰囲気を醸し出すその光景は、佳織の裸を照らし出した。今までの公園の外灯とは違い、その優しい光は彼女の肌を美しく浮かび上がらせた。拓也はそんな佳織の隣に立って手を繋ぎ、自撮り棒を構えた。

「じゃあ、撮るよ」
拓也はそう言って、シャッターを切った。カシャ、カシャ、と静かなシャッター音が響く。それはこれまでの写真よりも格別な、二人の間に流れる『特別な絆』を残す音だった。
「うん、いい写真が撮れた。これなら青年会のメンバーも、納得せざるを得ないだろう」
画面に映る写真を見て、拓也は満足そうに頷いた。スマホには、ライトアップされた噴水を背景に、全裸にマスクだけを着けた佳織と、その隣に立つ拓也が写っていた。

「この写真が、青年会のメンバーに共有されるのね」
佳織はそう言いながら、満足そうに微笑んだ。二人は手を繋いで車まで戻り、その日のアルバイトは終了した。

***** ***** ***** ***** *****

翌週、佳織はいつも通りに大学へ行った。しかし、佳織が教室に入ると、すぐに真弓が駆け寄ってきた。

「ちょっと、アンタって本当に肝が据わっているわね。見たわよ、和菓子屋の若旦那とのツーショット」
真弓が手にしたスマホには、拓也が青年会仲間に送った画像が表示されていた。それは、ライトアップされた噴水を背景に撮られた『あの写真』だった。画面の中の佳織は全裸姿で拓也と寄り添い、マスクをしていても、どこか得意げな表情を浮かべているのが分かった。しかも画面の端には、偶然にもその場面に居合わせた、犬を連れた夫婦らしき人まで写っていた。

「あの時は気付かなかったけれど、全然関係ない人たちも写っているじゃない」
あらためて写真を見た佳織は少し驚いたが、それと同時に、胸の奥が温かくなるのを感じた。それは、拓也との秘密の交流が、写真に刻み込まれていることへの『喜び』だった。

「佳織がこんな悪趣味な『遊び』にハマるなんて、意外だったわ。でもまあ、おかげで拓也さんもメンバーの仲間入りを果たせたし、良かったんじゃない?」
真弓はそう言って、佳織の肩をポンと叩いた。
「ちなみにこの写真は、青年会のグループチャットにしか流れていないから安心して。私の彼氏が、これ以上拡散することはないって約束してくれたし、メチャメチャ褒めていたから」
佳織はそれを聞いて、安堵した。

佳織はこのアルバイトによって、今まで知らなかった『新たな一面』を発見した。それは、背徳的なスリルを受け入れられた『自分』であり、家族にも話せない秘密を共有することに喜びを感じる『自分』だった。
「・・・ねえ。この写真、私にも転送出来る?」
佳織はそう言って、スマホを差し出した。その言葉に少し驚いたが、真弓はすぐに微笑んで、佳織のスマホに写真を転送してくれた。

「まさか、これで最後ってことはないわよね?」
佳織は、自分と拓也が一緒に写った写真を見つめながら呟いた。それはアルバイトのことではなく、拓也と新しい秘密を共有したいという『純粋な想い』だった。
【おわり】


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編集 編集
件名 Re: 『裸の街』をアレンジしてみました
投稿日 : 2025/08/07(Thu) 07:44
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
『裸の街』のアレンジですね。
この作品は、唯一、Grokで書かれたものです。
他の4作品とは、少し違う文体だったり、展開だったりしたのにお気づきでしょうか。

ベルさんのアレンジはみごとでした。
裸で街を歩く設定を、こんな形で持ってくるとは意外でした。
一つの場所だけでなく、車の中や、移動先でのベストショット撮影など、露出時間に時間を掛けていて、
その間、ヒロインの心の揺れをうまく表現していると思います。
絶対、露出にハマるパターンですね。
と言うか、これからが本番みたいな……
続編希望の声が掛かるかもしれませんね。
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